2008年2月24日日曜日

勉強会へ行ってきました

 今村先生の「がん患者のあきらめない診察室」の勉強会へ行ってきました。
今まで何度か申し込んできましたが参加がかなったのは今回が初めてです。さぞや多くの参加者がいるのだと思っていましたが、10数人という予想よりも少ない(希望は殺到していたと思いますが)参加者数で、予想外のアットホームな雰囲気の中、未認可薬や新薬の話、個別の質問もゆっくり出来ました。

 今回聞きたかった事...
肺原発、両肺転移の悪化と肝転移を抱えている今、母の今行っているイリノテカン単剤での治療という方向性が正しいかどうか、また今後の治療に関しての今村先生の見解、この2点です。

先生の回答は、イレッサが著効したのであれば分子標的剤を治療の中心におくべきで、今行っている抗がん剤治療は言わば「繋ぎ」的な考え、命を脅かさない程度の増悪であれば副作用の少ない抗がん剤を選んで続行が正解、との事でした。
 サイトを見ていますのでイレッサローテーションの考えは私にもあり(タルセバの使用はもちろんの事)、納得出来ました。
問題はその増悪がどれくらいのスピードでどのような状態へ進むかなのですが、それは誰にも占えません。

 イリノテカンは白金剤と併せるのが良いと他からのアドバイスもありましたが、先生曰く、シスプラチンは私たちくらいの年齢の人間でもかなりグロッキーになるらしく、母の年齢を考えると良策では無いとの事。

 肝転移に関してはPETに映らないくらいの大きさであれば局部治療は逆に不可能だという事、3、4センチの大きさになったらラジオ波やノバリスで処置をする考えも無くは無い、との事でした。要するに肺から飛んでいるものであれば原発をコントロールするのが第一で、転移はそれが原因でPSが落ちるような状態にならなければ共存を目指すのが良いという事だと自分の中で納得しました。
 どのような処置も体には負担があるものですから、無駄に体力を奪うよりは経過を見るというのが今の段階では妥当なのでしょう。

 参加者は患者さんご本人やご家族の方ばかりで、今日は肺腺ガンの方が多く他の方のお話もとても参考になりました。
イレッサ著効例でもその後脳転移が多発するという分子標的剤の特性については、アバスチンの投与で防げるというのが先生のお話でした。母の場合はイレッサが効いていた間は脳転移は抑えられていたのですが、耐性と診断されてナベルビン単剤の投与に変えてから一ヶ月足らずで20個以上の多発脳転移が見つかりました。
 脳はサイバーナイフセンターで診察を受けていますので3日間で10数個の処置を行い、処置の必要の無い小さいものに関しては今も経過観察中です。

 日本では大腸がんに認可されているアバスチンですが、海外では非小細胞ガンでの効果が認められているにも関わらず薬価が高く、厚労省がなかなか認可をしないようです。先生の情報だと2、3年中には、という事でしたが難航しそうな雰囲気だとおっしゃっていました。
 現状自費での投与という事になりますが、一回の投与でだいたい30万弱だそうです。選ばれた人にしか出来ませんね。

 効果が分かっていながらなかなか認可されない薬は他疾病でも沢山あると思います。製薬会社と厚労省役人たちのどのような利害関係がうごめいているのかは分かりませんが、自分たちの家族がその薬を必要としている場合を考えても同じような対応でいられるのでしょうか。

 今日は驚いた事が一つ。
それは母と同じ病院、しかも同じ主治医の患者さんがいた事です!
「主治医が国立ガンセンターのデータばかりを言い、融通がきかなくて困る」という事をおっしゃっていたので「ああ、うちと同じだな」とは思っていたのですがまさか同じ主治医だとは!スピリチュアル通では全くないですが、驚くと同時に何か導きのようなもの(?)を感じました。

 勉強会終了後に場所を変えてそのご夫妻とお話させて頂きました。奥様が腺ガン4期、イレッサが良く効いてお元気に職場復帰もされたようですが、今後の耐性や転移を懸念されての参加だったそうです。母よりも一回りほど若い方でしたが、とてもお元気そうに見えました。なるべく長くイレッサが効く事を祈るばかりです。

 長くなりましたが最後に。
今日参加されていた方々の中にも様々な理由で主治医に疑問や不満を抱えている人が多い事がわかりました。
一つの病院、一人の主治医と心中したくなければ自ら知識を付けてセカンドオピニオンや実際の診察をもって自分で主治医を増やす事が大事だと先生はおっしゃっていました。これは平岩正樹先生のセカンドオピニオンでも言われた事です。

 母は今肺の主治医、サイバーナイフセンターでの脳外科の主治医、近所のクリニックで腫瘍マーカーの自費診察をお願いしている先生と三人の主治医がいます。また肺の主治医がなかなかCTを撮ってくれないので、同じ近所のクリニックの先生の紹介状で近隣の大病院で月一回CTを撮ってもらっています。
 やっている事は間違っていないのだとしたら、今後の治療がうまくいく事を祈りつつ頑張るしかありません。



 
 


 

2008年2月15日金曜日

余談です。

 友人から送ってもらった本「天国へのビザ」を読みました。
現役の医師が尊厳死に関して書いた本です。著者は自分の意見を述べるでも無く、実話を淡々と書いているのですが最後は涙が止まらなくなりました。
 生まれる事、死にゆく事、誰にとっても一生に一度しか無い特別な事です。
 自らの病を知り死と対峙した時に残りの人生をどう生きるかはせめて自分で決めたい、と誰でも思うのでは無いでしょうか。でも悲しいかな、病によってはその選択の自由も無いのです。

 本の中にはほんの少しですが老人介護施設に触れた部分があり、その短い文に強く同感を覚えました。
ガン治療の話とは離れた話になってしまいますが、私にも老人介護施設に関しての苦い体験があります。

 数年前、義母と義父が同時に具合が悪くなった事があります。
色々ないきさつがあり、義父を一時的に介護老人施設に預けるという運びになりました。その際に10数件の施設をまわり、面接を受けました。
 受け入れ先の審査は厳しく、短期間に、各施設で数々のかなり突っ込んだ内容の質問をされ、挙げ句入所を断られるという繰り返しに精神的にも厳しい日々でした。

 その中で訪れたいくつかの施設に私は正直「怒り」を覚えました。
とある施設で面接を行った職員は20代前半の女性、やたら明るく、「何でも言っちゃって下さいね!」と場違いな笑顔を私に向けて質問を始めたのです。
 変なペンの持ち方で誤字混じりにメモを取り、語尾を伸ばす話し方や敬語の使い方が間違っている事が気になりながらも、何よりも自分の作り込んだ明るさがこちらの気を和ませると信じ込んでいる勘違いに逆撫でされました。
 何故このような若い娘に家族の極プライベートな事を話さなくてはならないのか、と途中退座したい気持ちを堪えました。

 もう一つの施設では胸のポケットにタバコの箱を覗かせた若い女性が出て来きました。その女性は前述の女性に反して終始表情は暗く、声も小さくマニュアル通りに質問を続け、最後に家族用の用紙に書いてある内容を「規則なんで一度頭から音読して下さい」と私に告げました。仕方無く読み上げましたが、まるで無意味なこの行為を強要させられるのは、やはり家族の気持ちを逆撫でする以外の何ものでもありません。

 このような仕事には資格がいるのだとは思いますが、面接という、直接家族に関わるデリケートなシーンには紙面上の資格では無く、ある程度同様の経験があり心境を理解出来る職員、もしくはきちんとした対応の出来る年齢の(もしくは常識的知性のある)職員を出すべきでは無いでしょうか。
 
 医療にしても介護にしても、施す側にそれを受ける側の気持ちを真に察してくれる人がいるのといないのとではあり方がまるで変わると思います。
 
 ブログの主旨とはずれて何だかただの思い出し愚痴のようになってしまいました。
 

2008年2月10日日曜日

また雪が降りました

 東京は今年2度目のまとまった雪。夕方からみぞれのような雨が降り始め、八時頃には真っ白い雪になり、都心の道路にも積もりました。渋谷ではピンヒールを履いた若い女の子がスペイン坂を下れずに困っていました。

 時代に逆行した屈強な4WDに乗っていますので滑る事無く無事帰宅、洗濯を済ませワインを飲みながらPCを開きメールをチェック。
 一通、良い知らせがありました。母の告知以来毎日見ているサイトはいくつかありますが、その中でも特に先進的、かつ実用的な情報が得られるサイトがあります。そのサイトの主催である医師の勉強会へ参加出来る事になりました。
 未承認薬の可能性や承認薬の希望の持てる組み合わせなど、有効な情報を得られるといいのですが。
 
 未承認薬と言っても少し前のタルセバのように海外から個人輸入しなくてはいけないようなものと、他ガンには既に承認、使用されていて、非小細胞ガンには保険適応が無いものとありますね。
 前者に関しては金銭的な問題や、国内での副作用のデータが無さ過ぎて手を出すにはなかなか勇気がいります。混合診療などにうるさい昨今では黙認の上診察してくれる医師も少ないようです。完全に個人の責任の元で新薬を投与するのはかなりの冒険です。
 タルセバはその後一般病院での処方は開始しているという話をあまり聞きません。母の通う病院ではまだ使用出来ません。いくらイレッサの一件があったとは言え慎重すぎる気がします。これではますます国内での副作用のデータが取れずに悪循環を生むのでは無いでしょうか?

 後者に関しては海外では既に効果が認められて承認されているアバスチンやアリムタなど、薬剤としては日本に普通に存在しているものです。何が承認への流れを食い止めているのでしょうか。患者の安全性?予測される副作用などを考えるともちろんそれもあるはずです。でもそれだけでは無い何かを感じざるを得ません。1日も早く適応になって欲しいです。
 
 
 
 

  

2008年2月6日水曜日

検査結果と経過

 昨日はサイバーナイフセンターでの脳MRI、今日は血液検査と抗がん剤投与の日でした。
脳検査の結果、小さい転移は存在しているももの、増大は無く、むしろ退化している転移巣もあるようで、まずまずの結果でした。
2度目のイレッサを投与していた12月の1ヶ月間で肺がんが進行してしまったので脳転移の進行は覚悟していたのですが安心しました。無効だと思っていたイレッサが最後の力をい振り絞ってくれたのでしょうか。
安心...と言っても常に期限付きなので気は抜けないのですけどね。

 脳の検査はいつも同行していますが、肺の主治医に会うのは久しぶりでした。
3度目のイリノテカン、初回は半量、前回は標準量を投与、前回の投与後の副作用がちょっと辛かったようですので(下痢と吐き気)今回は初回と前回の間くらいの量を、と思っていたのですが「初回は様子見で減量しましたが通常はそういう事はしません。私が把握しているのは標準量でのデータですので」と言われ、今回までの三回で1クールなので標準量の投与を勧められました。
 初回の投与から一週間後のCEAは下降していましたのでイリノテカンは効くかも知れない!との願いを込めて標準量の投与を決心しました。効くのなら数日間の副作用は我慢する、との母の決断です。

 肝臓転移に関してのはっきりした返答はもらえず、「この段階でどこに転移したからそこを局部的に叩く、という事では無く、まずは肺原発の進行を止めるのが先決です」と主治医曰く。
 患者側からして見れば転移は病気の進行度を表すものとして受け止めるので、そう言われてもあっさり納得は出来ずはぐらかされた感があり...とは言え言われている事が分からない訳では無いので引き下がりました。
 
 まずは骨髄抑制が無く抗がん剤を投与出来た事は良い事、次回のマーカーとCTの結果を見て今後の事を話し合いたいと思います。
久々の通院同行で主治医と患者とのコミュニケ−ションの難しさを改めて感じました。
 

 

2008年2月4日月曜日

海へ

 今日は休日、仕事仲間と遠出をしました。
神奈川県の海の見える公園の山を登り、海沿いを歩き、砂浜でしばし時を過ごしました。砂浜からも冷気が上がってくる程の寒さでしたが白く寄せる波の音を聞き、心が軽くなるのを感じました。
公園内にはすでに梅が芽吹き、白い水仙が沢山咲いていて春が近い事を実感しました。
山は内に入る、海は解放だと言います。どちらも自然の命の宿る場所、生命力に溢れる樹々や花、土や水に触れると慌ただしい時間の流れが本来のスピードに戻り、ゆったりと安らぎを感じます。

 初回イリノテカン投与後の腫瘍マーカー(CEA)の結果が出ました。59から49に下がっていました。母の場合、CEAがほぼ忠実に状態を表すので一週間で10も下がったのは良い兆候です。薬の選択が正しかったのかも知れません。このまま全身に作用して肝臓の転移も治まってくれると良いのですが。

 白金製剤+タキサン系+アバスチンの治療が欧米では効果が上がっているようです。
今後アバスチンが肺がんに保険適応される可能性もありますし、それ以前にタルセバの処方がもっと浸透するはずです。諦めずに一歩一歩、進んで行きたいと思います。

 闘病とは良く言ったもので、本人はもとより家族も毎日病気との戦いです。
心が疲れた時には大自然にチャージを求め、頑張っていきたいと思います。
明日は脳MRI検査です。

2008年2月2日土曜日

2月になりました。

 忘れもしない2006年3月1日、母は肺腺ガン4期との告知を受けました。
あれから2年弱、母の病の事が頭から離れた日は一日もありません。
母がまだこの世界に生きていてくれる事に感謝を込めて、まだまだ治療の可能性を諦めてはいけない!と思い続ける日々です。
 インターネット上で知り合った母と同時期に同じ病期で告知を受けた方々の訃報が入る度に大きな悲しみと無力感に襲われます。
でも私たちが立ち止まって悲しむ事を旅立った人たちは微塵も望んでいないでしょう。
無理矢理にでも前向きに気持ちを持っていくしかありません。

 イリノテカンの二回目は思い切って標準量を投与しました。
そのせいか二日目くらいから下痢と食欲の副作用が表れ、やっぱり量が多かったのか...と反省。
抗がん剤の投与量と効果は並行しないものとは言っても少なすぎる量では奏効は望めず....体力とのバランスを見ながらの治療を行ってくれる病院があるといいのですが、なかなか一人の患者にそこまでの時間をかける訳にはいかない、というのが大病院の現状でしょう。